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prologue

 「はぁっ、はぁっ、…!」

 

 ああ、あいつが追いかけてくる。

 

 「も、やだ…!」

 

 なんで、こんなことに。

 

 少女―エメリア―は、日に照らされ美しく輝く稲穂のような髪を振り乱して逃げていた。

 

その髪の色は、月さえない漆黒の闇夜によく映える。

 

…つまり、非常にわかりやすい目印となっているのであった。

 

「グルルルル…」

 

「ひっ!」

 

月がないせいでより一層深くなる闇のその奥に、エメリアを追いかけるものがいるようだが…。

いかんせん、その正体は、深き闇により暴かれるのを拒んだ。

 

「やだ、やだよ、助けて…!」

 

エメリアは、必死に助けを求めるも、月も出ぬ闇夜に散歩している人など、いないと常識的にはわかるだろう。さらに言うならば、ここは村のものが”悪魔の森”といい、この森すべて、そして旅にきたものにもすべて、ここに来ないようにと言い含めるのだから、人など来るはずがない。

 

なぜエメリアはこんなに絶体絶命な目にあっているのか。

 

…それは、数時間前にさかのぼる。

 

 

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